関西電力が大飯原子力発電所1、2号機(福井県)を廃炉にする方針を固めたことは、政府が進めるエネルギー基本計画の見直し議論に影響を与え、原発意外でもどうエネルギーをまかなうのかという実効性あるバランスを探る契機になる。
国の長期エネルギー需給見通しでは、2030年の電源構成に占める原子力の割合を16年度の2%から20〜22%に引き上げる計画だ。これを達成するには、国内にある42基のうち30程度の再稼働が必要とされる。
原発の寿命が原則40年と定められるなか、約半数が30年以上となっている。廃炉を決めるにあたり、電力会社は経済産業省や原子力規制委員会と事前に調整をしているとみられ、短期的には国の政策に影響を与える可能性は小さい。
ただし、11年の東京電力・福島第一原発の事故以降、原発に求められる安全対策は格段に強化され、電力会社の負担が急速に重くなった。数千億〜兆円単位のコストは電力会社一企業に負えるリスクではなくなっている。世論調査によると3分の2は再稼働に慎重で、電力会社が進めにくい事情は増えている。
政府は震災前に比べれば原発の割合を下げる構えだが、一定程度の比率は維持したいと立場だ。廃炉を決める電力会社が想定以上に相次げば、政策への影響は避けられない。政府は経産省で進めている議論をもとに、来年度にはエネルギー基本計画の見直し案を閣議決定する方針だ。
東日本大震災から6年半。原発がほとんど動かなくても電力をまかなえてきたのは事実。だが原発が動かなければ当面は火力で代替するしかない。石炭や天然ガスの調達コストは膨らみ、二酸化炭素(CO2)の排出は増える。再生可能エネルギーの普及など様々な要因を見極めつつ、将来のエネルギー像を詰める作業が一段と必要になる。